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花粉症は根治できない?いえいえ、一つだけ完治できる方法があります。
舌下免疫療法

減感作療法とその内の一つである「舌下免疫療法」についてまとめてみました。
最後に、舌下免疫療法を実施している医療機関一覧も掲載しています。


花粉症の現在の治療方法

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花粉症の現在の治療方法は大きく分けて、対症療法と根治療法の2つです。
順番に説明していきます。

対症療法とは、一般的に良く知られている以下のような治療法です。

■ 対症療法
1. 点眼薬、点鼻薬などの局所療法
2. 内服薬などによる全身療法
3. レーザーなどによる手術療法

これらは一時的に花粉症の症状を軽減させますが、時間が立つと症状が再発するため、花粉症とうまく付き合いながら生活していく必要があります。

ここでレーザーによる手術は完治しないの?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
実はレーザー治療でも一時的にしか効果はありません。また、レーザー照射により鼻の粘膜を焼きますので、頻回にできない点がデメリットでもあります。

さて、ではもう一つの根治療法とはどういったものでしょうか?

■ 根治療法
1. 減感作療法(正式には抗原特異的免疫療法と呼ばれています)

実は現在、花粉症を完治できる治療法はこの減感作療法のみです。[参考:平成22年度花粉症対策(厚生労働省)]


減感作療法(抗原特異的免疫療法)とは?

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この減感作療法を簡単に説明すると、花粉の抽出液を注射し、体を徐々に花粉に慣らしていき、花粉症の反応を軽減していくという治療法です。

花粉症は、花粉が鼻や目から入った際、体内の免疫機能が花粉を「敵」と見なして、その花粉を対外に排除しようとする(くしゃみや鼻水、など)仕組みが原因で引き起こされます。

花粉の飛散時期には「大量の花粉」が体の中に入るわけですから、体内の免疫機能は「大量の敵」が侵入してきたと勘違いし、免疫機能側もヒスタミンやロイコトリエンという物質を放出し、頻回なくしゃみと大量の鼻水で戦おうとするわけです。

さて、話を戻しますと、減感作療法では、非常に薄い濃度の花粉の抽出液から徐々に濃度を上げていくことで、免疫機能を花粉に慣らして、敵ではないと認識させるわけです。

分かりやすい、お風呂で例えてみます。
熱い湯船にいきなり浸かると、温度の違いをはっきり認識できますよね?

では、ちょうど良い温度に浸かっていたところから徐々に温度を上げていった場合、温度の違いを認識できるでしょうか?

要するにこれと同じことが免疫機能にも言えるわけです。

徐々に体を花粉にならしていく、これが減感作療法の治療コンセプトです。


減感作療法(抗原特異的免疫療法)のデメリット

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減感作療法は、スギ花粉症に対して非常に高い効果を発揮しています。

平成22度に行われた厚生労働省の研究成果によると、スギ花粉症に対して、軽症・無症状に治まった患者は実に80%以上にもなります。
また、2年以上続けてやめた後でも約70%の患者さんで効果が持続するとの報告もあります。

花粉症を根治させるためには、非常に有効な手段であることが分かります。

では、デメリットは何でしょうか。
大きくは以下の2つです。

1. 注射による痛み
2. 通院回数が多く、かつ期間も長い

注射の痛みに関してはいわずもがなと思いますので、もう一つの通院期間について。

上記のお風呂の例であげたように、この減感作療法は体を徐々に花粉に慣れさせていくものですので、時間がかかります。

具体的には、花粉症の季節の3ヵ月以上前から始め、2年以上続ける必要があります。
注射の間隔は、初めの3ヵ月が1週間に1回、次の2ヵ月が2週間に1回、その後は1ヵ月に1回の注射です。

歯医者に通うよりも頻回かつ長期間通う必要があるので、仕事をされている方にとってはかなり負担になりそうなスケジュールだと思います。

ということで、この注射の痛みと頻回な通院を解消すべく、臨床研究が進められているのが「舌下免疫療法」です。


舌下免疫療法

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治療コンセプトは減感作療法と同じですが、方法が異なります。
簡単に説明しますと、注射をしないので痛くない。かつ、自宅でもできるので通院も月1回で良い、という免疫療法です。

具体的には、舌下に置いたパンくずの上にスギ花粉を含むエキスを滴下して行なう、という治療法です。

分かりやすい動画を見つけましたので、まずはざっとご覧になってください。
3:17からが舌下免疫療法のパートです。

いかがでしたでしょうか。
注射が必要な減感作療法よりも、だいぶ気軽に取り組めそうな治療法と言えます。

ただ、二つの問題があります。
この舌下免疫療法は、現在ではまだスギ花粉症のみの対象であり、それ以外の花粉症には使えないこと。
また、舌下免疫療法は保険適用外のため、実費で年間7万円程度かかることです。

でも花粉症の苦しさを考えると、年間7万円は惜しくない!?ですよね。
そんな方には、やはりこの舌下免疫療法がオススメです。


まとめ

ノートと鉛筆

ということで、花粉症の治療方法と、最新の免疫療法についてまとめてみました。

最後に、舌下免疫療法の実施施設一覧を紹介いたします。
以下サイトから実施施設を引用させていただいております。
花粉症の減感作療法(舌下免疫療法)を受けられる病院とかかる費用


関東で舌下免疫療法を受けられる主な病院

■ 日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科(東京都文京区千駄木1-1-5 ℡:03-3822-2131)
舌下抗原特異的免疫療法(減感作療法)の臨床研究を日本では初めて倫理委員会の承認のもと行っている病院です。耳鼻咽喉科部長の大久保公裕先生は、様々なメディアで紹介されています。

■ 遠藤耳鼻咽喉科アレルギークリニック(東京都品川区西五反田2-32-1 ℡03-3491-2822)
慈恵医大のアレルギー班のトップだった遠藤朝彦先生(東京慈恵会医科大学卒業)が院長をしている病院です。遠藤先生は数少ない“減感作療法のスペシャリスト”と言われる、その道の権威です。

■ 千葉大学医学部附属病院(千葉県千葉市中央区亥鼻1-8-1 ℡043-222-7171)
アレルギー疾患や自己免疫疾患に対して、最先端の研究を行っている病院。2008年から「免疫システム統御治療学の国際教育研究拠点」というグローバルCOEプログラムも推進し、世界的な教育と研究の場にもなっています。

■ 東京都立広尾病院(東京都渋谷区恵比寿2-34-10 ℡03-3444-1181)
有病率が4人に1人とまで言われているスギ花粉症に対して、日本医科大・都臨床研との共同研究で従来の皮内減感作療法にかわる負担の少ない舌下減感作療法(SLIT)の治験実績があります。

■ ヒロオカクリニック(東京都新宿区新宿2-5-12 フォーキャスト新宿アヴェニュー3階 ℡03-3225-1666)
花粉症をはじめとするアレルギー疾患の診断・治療を専門医が担当しています。東京都は平成18年より3年間にわたって、8医療機関142名のスギ花粉症患者に対する臨床研究を行いましたが、同病院もこれに参加しました。


関西で舌下免疫療法を受けられる主な病院

■ 関西医科大学付属枚方病院(大阪府枚方市新町2-3-1 ℡072-804-0101)
アレルギーの根治をめざして体質改善を目的に2013年度から舌下免疫療法を開始しました。またアレルギー性鼻炎に対するレーザー手術を発案し、多くの患者から好評を博しています。

■ ゆたクリニック(三重県津市修成町2-3 ℡059-227-4187)
「みみ・はな・のど」の耳鼻いんこう科診療全般の診療に加えて、免疫療法などのスギ花粉症の専門診療を行っています。NHKニュースに出演し、小児スギ花粉症の舌下免疫療法を解説しました。

関東、関西以外にお住まいの方は以下リンクから最寄りの医療機関を探されると良いかと思います。
全国のスギ花粉症の舌下免疫療法 17件

以上、本記事が花粉症に悩む方々の一助になれば幸いです。

同じような悩みを持っている方のためにも参考になりましたら拡散いただけると嬉しいです。

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