最近、電車の中吊り広告や銀行の中のポスターなど、至ることで見かける『NISA(ニーサ)』の文字。
私の会社の同僚でもNISA口座を開設したという方もおり、注目度は高いなあと思うこの頃です。
でも、このNISA、損失が出た場合に通常の株式投資よりも損になる可能性があること、ご存知でした?
これからNISA口座で投資を始める方のために、NISAの3つのデメリットをまとめてみました。
パッと読むための目次
そもそもNISA(ニーサ)って何?

NISAは『少額投資非課税制度』と呼ばれる株式投資の税制優遇制度です。
この名前のとおり、NISA口座の株式投資に関しては『税金がかからない』というメリットが売りです。
具体的には、株式投資による利益や、配当などですね。
ただし、投資金額は年間100万円までという制限をはじめ、活用するにあたりいくつかの条件を満たす必要もあります。
ところで、このNISA、もともとはイギリスのISA制度を発祥ということ、ご存知でしたか?
日本(NIPPON)のISAということで、NISAと通称がつけられています。
では、発祥の地イギリスのISA制度はどういった状況かと言うと、イギリス居住者であれば国籍は問わず、どんな方でもISA口座を持つ事ができるようです。既にイギリス国内でも認知度は高く、広く活用されています。
その甲斐もあり、ISA経由でイギリスの金融市場には20兆円もの投資マネーが流入しており、市場活性化に役立っているようです。
そして、日本では2014年の1月からこのNISAが始まるのです。
なぜNISAが今はじまるのか?
それでは、なぜこのタイミングでNISAなるものが始まるのか?という疑問が生まれます。
それは、2013年で終了する証券優遇税制のためです。
実は、2013年までは証券優遇税制と言って、株式投資における利益に関して税金が10%に優遇されていたという背景があります。
通常は20%でしたし、FXや商品先物も20%の課税でしたので、まさに株式投資のみの優遇策でした。
これが2014年から20%になるということで、間違いなくこれからは株式市場が縮小すると予想されます。
そこで、市場へのマネー流入の落ち込みを防ぐために考えられたのが、このNISAです。
要するに、これまで株式投資をしていなかった層も取り込み、新規マネーを獲得するという目論見であると私は考えています。
一般的なビジネスを考えてみると、新規顧客よりも既存の顧客を大事にする方が優先なので、私からするとなぜ?と思ってしまいますが。。。
色々と背景にも事情があるのでしょう。
ということで、2014年から始まるNISAについて、デメリットを中心に触れていこうと思います(証券会社はメリットを強調しますので)。
NISAのデメリット
証券会社や銀行などのPRではNISAのメリットが強調されているように思えます。
それもそのはず、NISAを普及させたいという下心がありますから。
でも、我々一般市民は、デメリットを把握したうえで、NISAを賢く活用していきたいですよね。
ということで、以下にNISAを使う前に知っておくべきデメリットを3つ紹介したいと思います。
損をした場合に損失通算や損失繰り越しができない
株式投資における、損失通算と損失繰り越しは非常に需要な要素です。
順番に説明していきます。
1. 損失通算
自分が購入した株が値下がりし、損失が出た場合は、他の株で出た利益と相殺できるため、年間のトータルの利益に対してが課税対象となります。
例えば、ある口座でAという株を買い、別の口座でBという株を買うとします。
Aの株は50万の利益が出ましたが、Bの株は100万円の損失が出ました。
この場合は、トータルでは50万円の損失なので、利益は出ていないということになり、課税対象となりません。
ここまでが課税口座を複数持つ通常の場合です。
ところが、NISA口座の場合は、この損失通算ができません。
従って、ある口座でAの株が50万利益が出ていて、NISA口座で100万円の損失が出た場合は、NISA口座の損失は「損失とみなされない」ので、50万円の利益のみが出ているとみなされ、50万円に対する20%の税金がかかってしまいます。
2. 損失繰り越し
次に、損失繰り越しについてです。これも、損失通算の時と考え方は同じです。
損失繰り越しとはその名前の通り、株式投資で損失が出た場合に、その損失を3年間繰越ができる制度です。
例えば、2013年に株式投資で100万円の損失を出した場合は、翌年にその損失分を繰り越しできるので、翌年で100万円の利益が出た場合でも、2年分で収支はトントンということになり、税金はかからないという投資家にはありがたい制度です。
NISA口座の場合は、「損失が出ていても損失とみなされない」ので、この翌年への損失繰り越しも使えないというデメリットがあります。
ということで、NISA口座を使う場合は、負けない投資をしないとかえって損になるということ、良く覚えておいてください。
信託投資の場合は普通分配金のみ適用される(特別分配金は適用外)
NISAは100万円までと上限が決まっており、また売買を繰り返すことは想定されていないため、基本的にはバイアンドホールドになると思います。
そうなると、「投資信託」という選択肢が主になってきます。事実、NISAの発祥の国、イギリスでは投資信託が主力になっているようです。
そこで、NISAで投資信託を使う場合には、少し注意しておいた方が良い点を紹介します。
日本の投資信託では「毎月分配型」が人気があります。そして、この毎月分配型には2つのタイプがあります。
投資信託で出た収益を分配する「普通分配金」と、収益が足りなかったことによる投資信託の原資を分配する「特別分配金」です。
NISAは利益に対して税金がかからない制度ですので、普通分配金については課税されないというメリットがあります。
一方で、特別分配金は、原資を切り崩して分配しているため、そもそも利益ではありません。
そのため、課税対象ではなく、NISAのメリットを享受できません。
つまり、自分が持っている投資信託が特別分配金を配当金として出した場合は、別にNISA口座でなくても良かったということになります。
要するに、NISA口座の無駄使い、ですね。
NISAの非課税枠は年間100万円までの新規購入分という制限がありますので、賢く使うためには、いかに利益が出ている投資信託や銘柄をNISAに割り当てるか?という点が重要になるかと思います。
利益が出ていないのに課税されることがある
これが一番分かりにくい点かと思います。
NISAは2014年〜2023年までは新たに5年間の非課税口座の運用が可能になっています。そのため、最長でも2027年までです。
そして、NISA口座が終了した場合は、そのまま特定口座に移行することになります。
NISA口座終了時に保有株を全て売却する場合は問題ないのですが、保有株を持ち越したまま、特定口座に移管する場合に大きな問題が生じます。
例を上げて説明していきます。
まず、NISA開始時にA株を100万円で買っていたとします。
これがNISA終了時に50万円に値下がりしていました。
ここで特定口座に持ち越した場合は、特定口座でのA株の取得金額は50万円になります(勝手にみなされてしまいます)。
そして、特定口座でA株が値上がりし、100万円に戻ったとします。
やっと買値に戻ったということで、A株を100万円で売却します。
さて、どうなるでしょうか。
実は、特定口座の中では、A株の取得金額は50万円となっているので、100万−50万=50万となり、50万円分が課税対象になってしまいます。
トータルでは収支トントンなはずなのに、なぜか税金だけ納めねばならなくなります。考えてみるとおかしな話ですよね?
このデメリットは金融機関も教えてくれているのか?私には分かりませんが、少なくともNISA口座を開設された方は留意された方が良いと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回の記事執筆にあたり、以下のサイトなどを参考にさせていただきました。
意外と難しいNISA口座の活用――「非課税」というキーワードだけに踊らされるな
知っておきたいNISA(ニーサ)の4つのポイント~その活用方法と注意点~
銀行・証券会社が語りたがらない少額投資非課税制度NISA(ニーサ)の3つの落とし穴
NISAのデメリットをもう一度まとめます。
1. 損失通算、損失繰り越しができない。
2. 投資信託の場合、利益を分配する毎月分配金にのみ適用される(特別分配金はそもそも課税対象でないため)。
3. NISA口座から特定口座移行後に損をする場合がある。
こうしてNISA制度を見てみると、なかなかデメリットが大きい制度だなと感じます。
株式投資で利益を出せるのは95%の人で、5%の方は含み損という話も聞きます。
そして、利益を出せている5%の方の中でも、一部の株では損失を出していますが、他の株で買っているのでトータルで利益を出しているという状況です。全ての株で利益を出すことはまず不可能です。
そう考えると、NISA口座の保有株や投資信託が含み損になる可能性は多いにあるわけです。
その場合のセーフティーネットである、損失通算や損失繰り越しがないのは非常に大きいデメリットです。
さらに、特定口座に移行する際にも、移行時の株価が取得金額になるという謎の運用もあり、これも足かせとなります。
私も株式投資を普段からやっており、年間でも利益を出しています。
その時に一番考えるのは「いかに損失を出さないか?損失が出た場合にはどこで撤退するか?」です。
利益を出すためには、「損失」の可能性についてまず考えるのが鉄則です。
このNISA口座は、投資で最も重要な「損失」について考慮されていない制度だなと感じてしまいます。
ということで、私はNISA口座は使わないだろうと思い、結局開設をしていません。
既に開設された方も、このあたりの「損失」というキーワードに着目して、注意して使ってみることをオススメいたします。
金融機関の方はこの「損失」に関してどこまで説明してくれるか分かりませんが、個人投資家が損をしようと結局は他人事、そう考えて自分の身は自分で守るしかないと思います。
以上、いつもの記事よりも長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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