毎朝、パンに塗っている”マーガリン”。
あの”マーガリン”が「プラスチック食品」だという話があります。
マーガリンに含まれるトランス脂肪酸が有害であるという話はよく知られています。
しかし、マーガリンが「プラスチック食品」「食べるプラスチック」と言われていることには驚きました。
しかも、その根拠として、フレッド・ローというアメリカ人が「マーガリン大実験」なるもので検証しているとのこと。
こんな気になる話は当サイトの管理人は放っておけません。早速、その真相について調べてみました。
パッと読むための目次
トランス脂肪酸に関するニュース
本題に入る前に、マーガリンが取沙汰されている背景を少しだけ。
トランス脂肪酸の安全性について、以前から海外で疑問視されてきました。
そして昨日、米食品医薬品局(FDA)が安全性を否定する見解を公式に発表しました。
(CNN)トランス脂肪酸の安全性否定 食品への使用禁止も 米当局
http://www.cnn.co.jp/usa/35039621.html
米食品医薬品局(FDA)は7日、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸の成分は「一般的に安全とはみなされなくなった」との仮判断を示した。これが公式見解になれば、加工食品への使用は禁止される。
マーガリンは「食べるプラスチック」なのか?
トランス脂肪酸が含まれる代表として必ず紹介されるのが、マーガリンです。
一部では、マーガリンはプラスチック食品と紹介する記事もあります。
その根拠とされるのが、フレッド・ローというアメリカ人が行った「マーガリン大実験」です。
例えば、日刊 勝ち組スポーツ下記の記事です。
〜マーガリンはプラスチック食品〜
トランス脂肪酸に絡んだ、ある興味深いマーガリンの実験があります。
北カリフォルニアで自然食品店、そしてその業界のコンサルティング会社の経営者でもあるフレッド・ローが行った「マーガリン大実験」と呼ばれるものがそれです。
マーガリンの塊を屋外に放置したのですが、2年経っても元のままで、おまけにカビも生えず虫も全くたからなかったそうです。
その実験や分子構造から導かれた結果はなんと、マーガリンはプラスチック食品だというものでした。
出典:日刊 勝ち組スポーツ http://www.kachispo.com/k/1433/
他にもこんな記事があります。
<腐らない油脂って安全?>
編集部 バターより健康的と一般的には考えられているのがマーガリンですが、別名「プラスチック食品」と呼ばれているそうですね。
大塚 フレッド・ローの「マーガリン大実験」という有名なエピソードがあるからです。(以下略)
出典:油に隠された危険「プラスチック化」された油脂=トランス脂肪酸
月刊誌記事から>大塚陽一氏インタビュー(No.193)
http://tabemono.info/report/former/10.html
フレッド・ローのマーガリン大実験は嘘だった?
そこで、本当にマーガリンはプラスチック食品なのか?を確かめるべく、この「マーガリン大実験」を掘り下げてみようと思いました。
ところが、なかなか出典が見当たらないのです。
「フレッド・ロー マーガリン」で検索するとかなりの記事がヒットするにも関わらず。。。
おかしいな、と思っていると、私と同じように出典を探している方を見つけましたので、その方の記事を紹介します。
軸、ぶれています
http://wakegiorino.blogspot.jp/2012/03/blog-post.html
フレッドさんが実験について綴った文章を書籍から全文(と思われる)引用しているサイトを見つけた。
Toucan Foods
http://toucanfoods.com/healthy/2010/10/29/scary-food-part-ii
本文では「nontechnical(専門的でない)」「ほんのささやかな実験」と書いているので、大仰なタイトルはわざとシャレでつけたのではないだろうか。
バターとマーガリンを出しておいたらバターには虫がたかったのにマーガリンにはたからなかった、という話は見あたらない。いつどこで、そんな話がくわわったのだろう。
フレッド・ロー(ローエ)さんは実在した。マーガリンの実験はたしかにおこなった。
ただし、フレッドさんがホストをつとめているサイトや、そのサイトから無料でダウンロードできる著作(電子書籍)には、この実験の話はひとかけらも出てこない。
ここまで読むと、本当にマーガリンはプラスチック食品と言えるのか?
結論が見えなくなってきました。
結局、マーガリンはプラスチック食品なの?
さらに調べていった結果、この問いへの答えは別のところにあることが分かりました。意外にシンプルです。
フレッド・ローの「マーガリン大実験」の話はいったん、忘れてください。
ちなみに、フレッド・ローの「マーガリン大実験」に関する面白いブログを見つけたのですが、これはまた別の記事でまとめます。
さて、話を戻します。
本当にマーガリンはプラスチック食品と言えるのか?
答えは、「Noです」。
理由は、化学用語である “plastic” が一人歩きし、いつの間にかプラスチック(合成樹脂)と誤解されてしまった。
ことが原因と考えられます。
そもそも「plastic」という単語は、日本語で「可塑性(かそせい)」と訳します。
そして、「可塑性」とは「粘度のような物性」を意味します。
つまり、英語の文献にある「plastic margarine」という言葉は、正確に訳すと、
「粘土のような物性を持つマーガリン」という意味になります。
マーガリンにも、液体に近いマーガリン(例えば、チューブ型のマーガリン)から、固体に近いマーガリンまで幅広くタイプがありますよね?
このように、液体から固体までの幅広いタイプを作れるのは、マーガリンが「plastic」という物性を持つからです。
以下、参考にさせていただいた記事です。
マーガリンハードやファットスプレッドなど植物油脂を使用して製造し、一般的にマーガリンと呼ばれているものの分子構造はプラスチックとは似ておらず、全く別なものとなります。(月島食品工業(株))
(中略)
プラスチック(合成樹脂)の構造は油脂の構造と全く違い、エチレン・プロピレン・塩化ビニル等の重合によって構造されています。油脂にありますトリグリセリドはありません。
英語の文献ではプラスチック油脂やプラスチックマーガリンという語句がありますが、プラスチックでできている油脂やマーガリンではありません。プラスチックは英語で可塑性という意味になります。
可塑性はマーガリンには必要な要素で、力を加えるとその形のまま姿を保つ性質(粘土の様な物性)のことです。
可塑性はマーガリンを塗りやすくしたり使いやすくするのに重要な性質です。
プラスチック油脂とは可塑性のある油(マーガリン)という意味になります。
まとめます。
マーガリンは “plastic” 食品ではありますが、プラスチック(合成樹脂)食品ではありません。
この “plastic” とプラスチック(いわゆる合成樹脂)をイコールとして誤解している記事が多かったので、みなさまご留意ください。